| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-016  (Poster presentation)

神奈川県の遊水地に定着するカダヤシの成熟と産卵期 - 沖縄県西表島の個体群との比較
Maturity and spawning season of the mosquitofish (Gambusia affinis) in a temperate pond: in comparison with a subtropical population

*畠山類((株)建設環境研究所), 北野忠(東海大学), 河野裕美(東海大学)
*Rui HATAKEYAMA(KKK), Tadashi KITANO(Tokai Univ.), Hiroyoshi KOHNO(Tokai Univ.)

 外来種による生態系への影響を予測するうえで,また生態系保全のための対策を講じるうえで,種が多様な環境に対してどのように応答するのか明らかにすることは重要である.本研究では,卵胎生魚のカダヤシを対象に,温帯域である神奈川県の遊水池に定着している個体群の繁殖特性を,亜熱帯域である沖縄県西表島の個体群との比較により明らかにすること,また,定着地における水温などの環境特性の違いが,繁殖特性の違いとどのように結びついているか検討することを目的とした.
 標本の採集は,神奈川県では2017年4月~翌年6月に毎月1回実施し,西表島では2017年6月~翌年6月にほぼ3カ月に1回の計5回実施した.標本は,10%中性ホルマリンまたは70%エタノールで固定・保存した.採集期間を通して,定着地の水温をデータロガーで記録した.
 標本解析の結果,孵化後数日以内と考えられる標準体長8.0㎜未満の稚魚は,西表島では5回の調査のいずれでも確認されたのに対して,神奈川県では6~10月と初夏~秋にのみ認められた.卵巣に胚を持つ個体の標準体長は,西表島産では18.5~38.8㎜(平均26.1㎜)であり,神奈川県産のほうが25.0~45.4㎜(平均33.4㎜)とより大きかった.胚の数は,西表島産で1~48(平均15.6)であり,神奈川県産のほうが12~144(平均51.9)とより多かった.神奈川県の定着地における水温は2.2~28.3℃と,西表島の10.9~32.0℃に比較して低く,季節的に大きく変化した.神奈川県産の雌の成熟体長が大きく胚の数が多いのは,体長頻度分布の推移から,西表島産の個体と異なって,初夏に産まれた稚魚の大部分がその年には成熟に至らずに越冬し,翌年の初夏に成熟して産仔するまでの間,成長するためと推測された.


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