| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-042  (Poster presentation)

ニホンジカの採食の影響による亜高山帯植生の均質化
Vegetation homogenization in a subalpine zone by sika deer browsing

*長池卓男(山梨県森林研)
*Takuo NAGAIKE(Yamanashi For.Inst.)

南アルプス北岳の亜高山帯において、ニホンジカによる植生への摂食が均質化に及ぼす影響について定量的に評価した。調査は、標高2200~2800mまでの通称右俣および草すべりのダケカンバ林および高茎草原で実施した。登山道沿いの約30mおきに長さ20mの調査区を設定し(ダケカンバ林16調査区、高茎草原26調査区)、それぞれにおいて、登山道の両側に5m間隔で1×1mの植生調査区を設置した(1調査区あたり10植生調査区。合計420植生調査区)。各植生調査区に出現した植生高2m以下の維管束植物種を記録し、ニホンジカによる摂食の有無も記録した。この調査を2010年、2012年、2014年、2016年、2018年に実施した。被食率(各調査区における出現種それぞれの合計出現頻度に対する、被食されていた出現頻度の割合)は、2014年にはダケカンバ林と高茎草原でほぼ同様であったが、それ以外の調査年はダケカンバ林で高かった。ダケカンバ林では、2014年まで低下していたが、それ以後は増加していた。高茎草原では、低下傾向が継続していた。種多様度(H’)と単位面積あたりの種数)は、それぞれダケカンバ林で高茎草原よりも高く、また低下の継続傾向が見られた。種多様度(J’)もダケカンバ林で高茎草原よりも高かったが、ダケカンバ林では上昇、高茎草原でほぼ横ばいの傾向が見られた。多重応答順列法(MRPP)により種組成を比較すると、ダケカンバ林と高茎草原は調査期間を通じて有意に異なっていた。2010年の種組成とその後の種組成をそれぞれの植生タイプにおいて比較したところ、高茎草原では有意な差異が見られなかったが、ダケカンバ林では2014年以後に有意な差異が見られた。


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