| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-044  (Poster presentation)

残存する海浜における植物種多様性の現状
Plant species diversity in remnant coastal communities

*小山明日香(森林総合研究所)
*Asuka KOYAMA(FFPRI)

海浜域は長らく人間利用と防災の場としてその大部分が改変され、特異な生物相を有するにも関わらず保全対策が進められていない生態系である。長大な海岸線をもつ日本においても、過去数十年で海浜の消失および分断化が進行し、海浜性植物の多くが絶滅危惧種となる一方、外来種を含む非海浜性植物が定着しつつある。残存する海浜で生物多様性の保全管理を進めることは急務であるが、陸域に比べ海浜域では生物多様性の構造の理解が不足している。

生物多様性は生態系の面積や景観レベルでの連結性に強く規定される。一方海浜では、海~内陸方向の帯状分布に沿って植物種組成が変化し、種多様性を生み出している。現在残存する海浜域は、沿岸方向での海浜の分断に加え、道路等による海~内陸方向でのハビタット消失が生じている。本研究では、自然海岸の減少率が著しく、震災復興事業も進行している茨城県を対象に、残存する海浜における植物群集の種多様性および生態系機能の規定要因を検証した。

調査は茨城県北~南部に残存する海浜6地点で行った。4~9月にかけて、出現する植物種、各種の開花の有無および分布ハビタット(汀線/前浜/後浜)を記録した。海浜性種および外来種に対し種数の規定要因(緯度、調査面積、ハビタットの有無等)および開花期間を規定する種特性(生活史、在来/外来、海浜/非海浜性等)を検証した。

結果、全サイトに絶滅危惧種を含む海浜性種が出現した一方、非海浜性の外来種が多く出現した。海浜性植物の種数は後浜ハビタットが残存する場合に高かったが、外来植物の種数は調査面積とともに高くなった。また、各種の開花期間は海浜性種において非海浜性種よりも長い傾向を示した。本結果は、海浜の植物種多様性保全のためには海浜面積よりも海~内陸景観の連続性の保持が要であること、連続性が消失した海浜では外来種の定着により生態系機能が低下する可能性を示している。


日本生態学会