| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-046  (Poster presentation)

降雨量操作が植物群集構造に与える影響:機能形質を用いたアプローチ
The effects of rainfall manipulation on plant community structure: functional trait-based approach

*髙鳥友樹(横浜国立大・環境情報), 岡田慶一(横浜国立大・環境情報), 近藤駿太郎(横浜国立大・理工), 小林真(北海道大・FSC), 佐々木雄大(横浜国立大・環境情報), 内田雅己(国立極地研究所, 総合研究大学院大学), 森章(横浜国立大・環境情報)
*Tomoki Takatori(Yokohama National Univ. EIS), Keiichi Okada(Yokohama National Univ. EIS), Shuntaro Kondo(Yokohama National Univ.  ES), Makoto Kobayashi(Hokkaido Univ. FSC), Takehiro Sasaki(Yokohama National Univ. EIS), Masaki Uchida(NIPR, SOKENDAI), Akira S Mori(Yokohama National Univ. EIS)

草原生態系は人間社会において重要な生態系の一つと言える。草原は陸上生態系の中で最大の生物群系であり、環境条件の中でも特に降雨量による影響を強く受ける。こうした背景から、気候変動に伴う降雨量の変化が草本群集の種多様性や一次生産に与える影響はしばしば研究対象とされてきたが、研究により結果は様々であり、そのプロセスやメカニズムに焦点を当てた研究は少ない。
植物群集構造の変化の要因は、植物の生存戦略や環境応答に関係する形質(機能形質)を用いることで評価できる。例えば、比較的形質の類似した種で構成される群集では環境条件による制限(環境フィルタリング)が、形質値の異なる種で構成される群集では類似種間の競争排除(類似性制限)が働いたことが示唆される。そのため、群集内での機能形質の平均値や多次元性を示す機能的多様性は植物群集の群集集合プロセスを評価するうえで重要な指標となる。
そこで本研究では、降雨量の変化に対する植物群集の変化のプロセスを明らかにするために、群集における機能形質値の分布に着目して解析し、降雨量操作に対する野外植物群集の応答を評価した。
北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林内の半自然草本群集を調査地とし、減雨区、増雨区、対照区を10プロットずつ設け、2016-2018年の5-10月にかけて降雨量操作を行った。2017、2018年のバイオマスピーク時に出現した29種のうち総被度99.7%を占める23種を対象に7種類の地上部形質を計測した。
その結果、対照区に対し増雨区では1年目に機能的多様性の上昇、減雨区では2年目に機能的多様性の低下の傾向が見られた。また減雨区では、葉の窒素濃度や比葉面積などの平均値が増加した。このような変化は、降雨量の変化に伴い環境フィルタリングや類似性制限などのプロセスが働いたことによるものだと示唆された。本発表では環境データも加味して降雨量操作に伴う群集の機能形質の変化プロセスを考察する。


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