| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-081  (Poster presentation)

カブトムシのツノ形態に関する研究
Horn morphology in Japanese Horned Beetle

*熊野了州, 高玉拓生(帯広畜産大学)
*Norikuni KUMANO, Takumi Takadama(Obihiro Univ Agr Vet Med)

 多くの動物のオスには,性選択を通して進化したと考えられている特徴的な武器形質が見られ,カブトムシのオスの頭角もその例の1つである.本種のオスは角に対する資源配分に2型が存在し,小型個体は大型個体に比べ角に対して相対的に大きな資源配分を行うことが知られている.頭角の形態は前蛹期に頭蓋下に作られる角原基により決定し,幼虫期の栄養状態や雌親の体サイズの影響を受けることがこれまでに明らかになっている.ただ,多くの昆虫で蛹化や羽化に温度が関与することが知られており,栄養摂取を終えた後も,蛹化期の気温は代謝を通じて武器形質の形態(サイズや形状)や行動に何らかの影響を及ぼすと予測される.そこで本研究では,カブトムシの頭角が形成される前蛹期・蛹期の温度を操作し(高温区:28℃,低温区:22℃),羽化させた成虫の羽化日,頭角と体のサイズ,頭角の輪郭形状を記録するとともに,雄間闘争を調査した.また,頭角と体のサイズのデータをもとに,頭角が相対的に短い大型個体(メジャー)と頭角が相対的に長い小型個体(マイナー)に分類し,雄間闘争と合わせて解析した.その結果,高温区は低温区に比べ羽化日がより早く,マイナー個体の割合が高かった.また,低温区の個体がより太い頭角であった.その際,頭角サイズは異なるものの,メジャーとマイナーの角の形状に違いはなかった.また,それぞれで小型個体は大型個体より羽化が早かった.そして,オスが角を付き合わせる闘争では,角の長さではなく先端がより広がる個体が有利だった.本研究より,カブトムシの頭角形成に栄養条件に加え気温の関与が示され,母親の産卵場所選択が息子の配偶者選択により深く関与することが明らかになった.


日本生態学会