| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-087  (Poster presentation)

ミイデラゴミムシの防衛行動:いかにカエルの捕食から逃れるか
Anti-predator defences of a bombardier beetle: How can it escape from frogs?

*杉浦真治(神戸大・農)
*Shinji SUGIURA(Kobe University)

 ミイデラゴミムシ(オサムシ科ホソクビゴミムシ亜科)は「ヘッピリムシ」とも呼ばれ、身に危険が迫ると腹部先端から高熱の防御物質を噴射する。体内に蓄えれたハイドロキノンと過酸化水素を酵素によって反応させ、約100℃の水蒸気とともにベンゾキノン類が発射される。しかし、本種の被食防衛効果についての研究はこれまでほとんど知られていなかった。本研究では、捕食者としてカエル類3種を用いて本種の被食防衛行動を実験室下で調査した。
 トノサマガエルは攻撃行動を示したが、68%の個体で舌がゴミムシの体表に触れた瞬間に(防御物質の発射以前に)攻撃を中止した。25%の個体は口内に入れるも防御物質の発射により即吐き出した。わずか7%の個体が飲み込に成功した。一方、より体サイズの大きいヒキガエル類では防御物質の噴射に関係なくすべての個体が飲み込みに成功した。しかし、ニホンヒキガエルのうち35%の個体が、ナガレヒキガエルのうち57%の個体が12〜107分後にミイデラゴミムシを吐き出した。驚くべきことに吐き出されたミイデラゴミムシは粘液に囲まれていたがすべて生存していた。これはミイデラゴミムシがカエル消化管内で長時間生存していたことを示唆する。防御物質を噴出しないミイデラゴミムシを飲み込ませた場合、ニホンヒキガエルのすべてが、ナガレヒキガエルの86%の個体が吐き出さなかった。つまり、ミイデラゴミムシはヒキガエル体内で防御物質を噴射し嘔吐を引き起こした可能性が高い。加えて、ヒキガエルの体が小さいほど、またミイデラゴミムシの体が大きいほど脱出に成功していた。以上の結果より、ミイデラゴミムシはトノサマガエルや小型のヒキガエル類の捕食からはほぼ逃れることができる。また、トノサマガエルに対する防衛成功には防御物質の噴射が必須ではないが、ヒキガエル類の体内からの脱出には防御物質の噴射が不可欠である。


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