| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-119  (Poster presentation)

Physiological differentiation inferred from germination rate between coastal and freshwater populations of the beach pea

*Tatsuo OHTSUKI(Lake Biwa Museum)

海浜植物のハマエンドウは海流散布型の硬実種子であり、海砂との摩擦によって種皮が傷つくことで、発芽が促進される。本種は主に海浜に生育するが、一部は琵琶湖湖岸等の内陸にある淡水の水辺にも定着している。これらの生育地は、かつては撹乱環境であったと考えられるが、現在は撹乱の少ない環境である。本種はクローン繁殖が可能であるが、種子による発芽特性について知見が乏しい。特に、琵琶湖の湖岸集団は滋賀県の絶滅危惧種に指定されており、個体群の維持や遺伝的多様性の維持を考える上で、発芽特性の解明は喫緊の課題である。そこで本研究では、琵琶湖岸集団の発芽特性を明らかにするとともに、海浜のそれと比較して相違があるかを検証した。まず、硫酸による発芽処理下では、湖岸集団の発芽率は海浜集団よりも有意に小さかった。一方、同処理をしない条件では、湖岸集団の発芽率は海浜集団よりも有意に大きかったが、発芽後の種子にカビが生える個体が多くなった。これらの結果から、本種を人為管理下で保護増殖することにおいては、発芽処理した個体を自生地に移植する方が、遺伝的多様性を担保した個体群の維持・増殖に適していると考えられた。一方、本種の種子は梅雨の時期に散布されるが、自生地では実験で観察されたようなカビが付着している種子はそれほど多くない。そのため、今後は自生地における湖岸個体の発芽特性を明らかにするとともに、発芽のトリガーになりうるものを探す必要がある。


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