| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-148  (Poster presentation)

生育段階別に13CO2ラベルしたリンゴ幼木の光合成産物の動態
Dynamics of photoassimilated carbon in young apple trees after 13CO2 labelling at different growth stages

*今田省吾(環境科学技術研究所), 多胡靖宏(環境科学技術研究所), 新井竜司(環境科学技術研究所), 谷享(環境科学技術研究所), 守谷友紀(農研機構果樹研), 久松俊一(環境科学技術研究所)
*Shogo IMADA(IES), Ysuhiro Tako(IES), Ryuji Arai(IES), Tkashi Tani(IES), Yuki Moriya(NIFTS), Shun'ichi Hisamatsu(IES)

果樹において、光合成産物の葉から果実への移行及び収穫時果実における蓄積は、各器官の生長に伴い変化するシンク–ソースの状態に大きく依存する。このような光合成産物の動態に関する情報は、大型再処理施設から排出される放射性炭素の可食部(果実)への移行・蓄積の動的予測のために必要である。本研究では、炭素安定同位体(13C)を用いて、リンゴ幼木に光合成で固定された炭素の収穫時における果実、葉及び当年枝中の残存濃度を調査した。
実験は、環境科学技術研究所の植物栽培室で、3年生のリンゴ幼木(ふじ、JM.1台)を開花期から収穫期までの約180日間栽培して行った。主に果実生育段階の前半期(開花後7、21、42、57、70、84及び140日)において13CO2に8時間ばく露し、その後、果実収穫日(開花後177日)に全ての個体を刈り取り、果実、葉及び当年枝の13C濃度を測定した。また、生育期間中に約4週間間隔で、各器官の炭素量を調査した。
その結果、果実生育段階の前半では、ばく露時期が遅い程、収穫時における果実中13C残存濃度が高い傾向が見られた。葉及び当年枝においては、開花から21日後のばく露で13C残存濃度のピークが見られ、その後、ばく露時期が遅い程13C残存濃度が低下する傾向が見られた。各器官の炭素量変化は、概ねシグモイド型の曲線を示したが、葉では果実生育段階の後半期に減少傾向があり、当年枝では増加傾向があった。葉及び当年枝の炭素量増加率の高い時期に13C残存濃度のピークが認められたことから、生長速度の高い時期に同化された炭素が収穫時に残存しやすいことが確認された。
(本発表は、青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。)


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