| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-163  (Poster presentation)

繁殖形質の異なるブナ科樹木の繁殖コストの種間変異 【B】
Comparison of reproduction cost among Fagaceae species with different reproductive characters 【B】

*韓慶民(森林総合研究所), 張秀龍(筑波大学), 壁谷大介(森林総合研究所), 北島薫(京都大学), 佐竹暁子(九州大学)
*Qingmin HAN(FFPRI), Xiulong Zhang(Tsukuba Univ.), Daisuke Kabeya(FFPRI), Kaoru Kitajima(Kyoto Univ.), Akiko Satake(Kyushu Univ.)

 繁殖資源分配戦略と開花戦略の多様化メカニズムを遺伝子ネットワーク進化の視点から明らかにするために、送粉様式、結実までの経過時間、花・種子量の年変動の程度など、多様な繁殖形質をもつブナ科樹木を対象に花と種子生産に必要とされる資源投資量を測定した。茨城県つくば市に位置する森林総合研究所樹木園に生育しているブナ・コナラ・アラカシ(風媒花・種子一年成熟)、クヌギ(風媒花・種子二年成熟)、クリ(虫媒花・種子一年成熟)、マテバシイ(虫媒花・種子二年成熟)の成木を選定し、それぞれの上層樹冠から雄花と充実種子を採取し、栄養塩(窒素・リン)、構造性・非構造性炭水化物を分析した。虫媒樹種のマテバシイ・クリのほうが、風媒樹種のブナ・コナラ・クヌギ・アラカシより、雄花序あたりの窒素量が高かいことをわかった。また、クヌギ・マテバシイ、クリのほうが、ブナ・コナラ・アラカシより、充実種子の炭素及び窒素量が高かった。これらの結果から、虫媒花または種子二年成熟の樹種のほうは風媒花または種子一年成熟の樹種よりその繁殖コストが高いことを明らかにした。更に、資源収支モデルを基づいて繁殖コスト比(種子の資源量/花の資源量)を算出した結果、マスティンク種のブナ・コナラのほうが1より大きいに対して、毎年開花・結実のアラカシ・クリ・クヌギ・マテバシイのほうが1より小さかった。従って、ブナ科樹種において種子生産量の経年変化パターンが異なることについて、資源収支モデルで説明できると示唆された。


日本生態学会