| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-164 (Poster presentation)
伊豆諸島における植物の種分化には訪花昆虫相の変化が大きな要因と1つとなっている(eg. Inoue et al., 1996)。しかし,研究の多くは膜翅目や鱗翅目の特定の種群を訪花昆虫とする植物の研究で,昼行性・夜行性の両方を訪花昆虫として広く利用する植物での研究はほとんどない。本研究においては,本土で夜行性の鱗翅目を主とし補償的に昼行性昆虫を訪花昆虫として利用している広域分布種キキョウ科ツリガネニンジンを用い,本植物が伊豆諸島においてどのような形態的変異を示しているのか,また訪花昆虫相に本土との違いがあるのかを明らかにした。形態的変異については2017・2018年関東地方の海岸2地点と内陸の1地点,伊豆諸島2地点(伊豆大島,三宅島)でサンプリングを行い13形質の比較をおこなった。訪花昆虫相調査は2017・2018年伊豆諸島の2島で昼夜連続撮影を行い,花の雌雄期を区別して昼夜の昆虫相とその訪花行動,訪花時刻,訪花頻度の比較を行った。その結果,各形質には島嶼・本土とも集団内には変異がみられるものの海岸の調査地では「海岸型」形態を持った個体の出現頻度が多く観察された。測定形質の中で特に花盤長には三宅島で他調査地と有意な差異が認められた。また訪花昆虫については,三宅島において本土での報告と異なり、昼行性の膜翅目の訪花が観察され、夜間の鱗翅目と比較してもその訪花効率は著しく高いことが明らかになった。花盤は蜜の分泌機能があり,この形態的な分化が訪花昆虫相の違いに対応している可能性が示唆された,また伊豆大島では天候悪化のため不十分なデータしか得られなかったが昼行性の訪花昆虫よりも夜行性昆虫の訪花効率の方が高い値を示した。伊豆諸島においては昼行性・夜行性の両方を訪花昆虫とする植物においても訪花昆虫の分化が起こっていることが示され,今後継続して調査を行いこのことを検証していく必要がある。