| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-176 (Poster presentation)
性的二型はさまざまな動物から広く見られる.たとえばトゲウオ科イトヨでは,雌雄で体型が異なるという性的二型が知られている.性的二型の進化は,適応的な表現型に雌雄で差があるために,それぞれの性が異なる性淘汰や生態的な淘汰を受けることによって起きると考えられる.しかし雌雄間に遺伝的相関があると,それぞれの性が異なる適応頂点に達することが妨げられると予想される.そこで本研究は,イトヨの体型の遺伝基盤が雌雄でどの程度共通しているのかを調べた.カナダの同一の河川から採集した側所的な降海型と河川型のイトヨ間でF2家系を作成し,体型の性的二型に関する量的遺伝座位(QTL)解析を行い,雌雄間でQTLの相加・優性効果の大きさや方向を比較した.一変量QTL解析の結果検出された集団間での体型の違いに関わるQTLのうち,多くが一方の性でのみ有意な相加的効果を示した.両方の性で有意な相加的効果を示したQTLもあったが,その中には性によって効果の方向が異なるQTLがあった.残りのQTLは優性効果のみを示した.優性効果のみを示したQTLには,一方の性でのみ有意な効果を示したもののほか,それぞれの性で効果の方向が異なるものがあった.多変量QTL解析を行ったところ,雌雄で異なる性特異的なQTLが見られた.体型の集団差に関わるQTLに性特異的な効果が見られたことから,イトヨにおいては雌雄で独立した体型の進化を可能にする遺伝的基盤があることが示唆された.