| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-178 (Poster presentation)
約40億年前に誕生した原始生命は、地球上の化学進化により生じた有機物を吸収し生活していたが、原始有機物には限度があり、約30億年前に酸素発生型の光合成により有機物を作り出せるシアノバクテリアが出現した。これにより、無機物から有機物を作り出す生産者と、有機物を分解して無機物にする分解者からなる原始生態系が誕生した。窒素は最も重要な生元素の一つであるが、有機物も無機窒素もない環境では、窒素の体内への獲得は容易ではない。このため、大気の主成分である窒素分子をアンモニアに変換する「窒素固定」反応によって生物は窒素化合物を生成する必要があり、一部のシアノバクテリアなど限られた微生物がこの反応を担っている。地球に生命が誕生した後、窒素化合物が継続的に供給されなければ、その後の生態系の維持と進化が起こり得ない。このため窒素固定は、地球初期の光合成生態系の拡大と密接に関わっており、生命の初期進化にも大きな役割を果たしてきたと言える。
現在では多様な生物が共存した生態系で地球は覆われているが、原始地球における生態系の初期形成は他の生物や栄養のないゼロからスタートした。生物的空白エリアに生物が侵入した後、絶滅することなく定着し、さらに他の種が侵入して共存していくためには、どのような条件が必要なのだろうか? 本研究では、周辺に栄養がなく無生物環境からスタートした希少な生態系である南極湖沼をモデルとして、生態系の遷移に関する数理モデルを構築することにより、生物の定着と複数種での共生が起こる初期過程の解明を目指した。
バクテリアとシアノバクテリア・藻類の窒素をめぐる個体群動態をベースにした競争−共生モデルを構築した。これにより、有機窒素・無機窒素・窒素分子の3つを窒素源として、初期窒素濃度と窒素固定能から、バクテリアとシアノバクテリアそれぞれの初期定着条件を明らかにし、共生可能条件とその遷移プロセスを明らかにした。