| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-188 (Poster presentation)
小学校学習指導要領解説「理科」では、地域の自然を教材化し、これらの積極的な活用を図ることが求められている。地域の自然に直接触れることは、自分の生活している地域を見つめなおし理解を深め、地域の自然への関心を高めることにもなりうる(文部科学省、2017)。岩手県沿岸部では、東日本大震災の影響による大規模な防潮堤工事によって、砂浜への立ち入りが制限され、子どもたちが地域の自然に触れる機会が減少している。また、工事によって海浜植物の生育地が減少する恐れがあり、沿岸地域では町を代表するシンボルとして取り上げられるものもあり、地域の身近な自然であるといえる。これらの背景から、本研究では岩手県の沿岸小学校で地域の身近な自然である海浜植物を用いた環境教育プログラムを開発・実践した。プログラムの開発にあたり、 (1)地域の自然に親しむことで自然への理解向上、(2)自然を大切に思う気持ちの育成、(3)地域への理解・関心の向上の三つを目標として掲げた。本プログラムは、野田村立野田小学校、山田町立船越小学校、陸前高田市立広田小学校で実践した。それぞれの小学校近辺の砂浜は、防潮堤工事前には海浜植物が多く確認されたが、工事により生育地が大きく改変された砂浜である。対象学年は小学校により異なり4年生もしくは5年生、対象人数は18~30名である。プログラムは、(1)それぞれの地域の砂浜の現状を知る座学、(2)海浜植物の種まきとその後の育成活動、(3)海浜植物の観察、(4)砂浜環境の調査、(5)種まきした苗の砂浜への植え替えなどを用意した。それぞれの小学校の授業スケジュールなどに応じて、プログラムの順番や内容は適宜変化させた。プログラムの前後に小学生にアンケートを取り、目標の達成について検討を行った。目標1および2では、概ね達成といえる結果であった。しかし、目標3の「地域への理解・関心の向上」については、良い結果を得ることができなかった。