| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-191 (Poster presentation)
環境DNAの分析手法としてqPCRやNGSが利用されているが、いずれの手法を行う場合もPCRの工程が必要となる。しかしながら環境中にはフミンをはじめとした様々なPCR阻害物質が含まれており、これら環境因子が分析精度を下げる要因となることが問題となっている。
また、水試料の濁度が高い場合、環境DNAの由来となる組織片等を集積するフィルターが目詰まりを起こし、うまく環境DNAを採取できないことも懸念されている。
そこで、我々は予めポアサイズの大きいフィルターで水試料をろ過(プレフィルトレーション)することで、上記の問題を改善できないかと考えた。本研究では、環境DNA分析において、プレフィルトレーションが分析結果にどう影響するかqPCR、NGSの観点から検証を行った。
神奈川県のほぼ中央を流れる相模川水系にて採水を行った。採水後、ポアサイズの異なるフィルター(10μm,50μm,200μm,840μm)を用いてプレフィルトレーションを行い、さらに0.7μm径のガラスフィルターを用いて環境DNAを回収した。そして抽出したDNAを対象として12Sアンプリコン解析を実施した。次にプレフィルターのPCR効率、検出感度への影響を評価するため、PCR阻害物質としてフミン質を採水後の水試料に添加し、上記と同様の処理を行った後、qPCRを用いて検証した。
12Sアンプリコン解析の結果、プレフィルターのポアサイズが小さくなるにつれて、魚類相のばらつきが縮小する傾向が伺えた。また、フミン存在下では、プレフィルターのポアサイズが小さくなるにつれて、反応性の向上(Ct値の減少)が確認された。さらにプレフィルターの検出感度への影響を確認したところ、影響はなく、むしろ高い再現性が得られた。本結果からプレフィルトレーションがデータの再現性や環境DNAの品質向上に寄与することが示唆された。