| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-202 (Poster presentation)
高等学校の生物分野において、生態学が必修の学習内容となっている。このことから小・中学校の段階で生態学的な感覚の素地を育んでいくことが重要である。そこで本研究では、小学校における自然体験をより効果的に実施していくため、長野県須坂市立須坂小学校で行われている総合的な学習の時間を用いた自然体験活動の取組について報告し、成果や課題について考察する。
須坂小学校では、3年生以上(平成30年度は148名)を対象に、総合的な学習の時間(くぬぎの時間)が、平成18年度から少なくとも12年間継続して行われている。このくぬぎの時間の中で、地域の身近な自然に関心を持ち、探求していく力を身につけることを目的に設定された講座が「鎌田山(かんだやま)やその自然を楽しもう」である。講座名にある鎌田山とは、小学校の南東側にある標高490mの里山であり、西側斜面はクヌギやコナラが優占する二次林、東側斜面はアカマツ林になっている。活動内容は、主にこの鎌田山やその周辺の動植物および岩石の観察採集、標本作りである。また各年度、季節や参加児童に合わせて、学校近隣の蝶の博物館の見学や同市内のフジバカマ園でのアサギマダラのマーキング活動にも取り組んでいる。講師は、教員だけではなく、市や公民館から紹介された地域の方々である。平成30年度の講座参加児童24名に対して、身近な自然観や学習内容に関するアンケートを実施した結果、放課後の遊びの中で昆虫や植物採集をしている児童はおらず、家族で登山やトレッキングの経験がない児童は10名であった。
以上のことから、放課後の過ごし方の変化や自然体験の減少している中で、身近な動植物と触れ合う時間を学校の継続的なカリキュラムにおいて確保することは、児童の自然観を育む上で重要であると考えられる。今後は、児童でも手軽に扱える図鑑の選定、簡易的な同定方法や標本作りといった指導法の確立が必要であると考えられる。