| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-231  (Poster presentation)

日本の生物多様性地域戦略に関わる協議・活動・策定後の意識変化には何が影響するか?
What are the influences on meetings, actions, and awareness of local communities by the LBSAPs in Japan?

*小川みふゆ(東京大学), 曽我昌史(東京大学), 今井葉子(茨城大学), 吉田丈人(地球研, 東京大学)
*Mifuyu OGAWA(Tokyo Univ.), Masashi Soga(Tokyo Univ.), Yoko Imai(Ibaraki Univ.), Takehito Yoshida(Res. Inst. Humanity and Nature, Tokyo Univ.)

生物多様性保全に効果的な各種の取組みを推進するには、生態系と人間社会の密接なつながりを理解することが欠かせない。社会-生態系の概念的枠組みはOstrom (2009)などによって提示されているものの、生態系と人間社会の両方を同時に評価・検討した研究はいまだ少ない。生物多様性地域戦略は、都道府県または市区町村における生物多様性の保全と持続可能な利用に関する基本的な計画である。とりわけ市区町村の生物多様性地域戦略には、地域に密着した生態系管理の取組が記載されている。本研究は、市区町村の生物多様性地域戦略に関わる協議・活動・策定後の意識変化が、各種の社会-生態的要因とどのように関係しているかを明らかにすることを目的とした。とくに、多様な主体の参加や伝統知・地域知の活用に着目して分析を行った。

2016年4月までに生物多様性地域戦略を策定した70の市区町村の職員と策定委員会委員を対象としたアンケート調査結果、生物多様性地域戦略の記載内容、市区町村のウェブ公開情報、生物多様性地域戦略のレビュー(環境省 2017)、日本全国標準土地利用メッシュデータ(国環研)、内閣府統計資料などをデータとし統計解析を行った。

市区町村の生物多様性地域戦略は、協議過程における多様な主体の参加のうち、策定委員会委員の多様性に対して、人口規模、首長の影響および海岸の有無が関係していた。また、伝統知・地域知の重要性に対して自然草地・二次草地の面積が負の関係を、伝統知を地域戦略に取り込んだ数は自然林・二次林の面積が正の関係をもっていた。また、伝統知・地域知活用と社会経済的要因との関係は検出されなかった。地域戦略による住民の意識変化の程度は、農業産出額と負の関係が見られた。詳細な関係の分析については今後実施予定である。

(独)環境再生保全機構環境研究総合推進費S-15の支援を受けた。


日本生態学会