| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-276  (Poster presentation)

干潟マクロベントス多様度の空間階層的積み上げ 【B】
Spatial hierarchy of macrobenthic biodiversity in Japanese tidal flats 【B】

*高田宜武(水産機構日水研), 内田基晴(水産機構瀬戸水研), 手塚尚明(水産機構瀬戸水研), 辻野睦(水産機構瀬戸水研), 重田利拓(水産機構瀬戸水研), 澤山周平(水産機構中央水研), 黒木洋明(水産機構中央水研), 丹羽健太郎(水産機構中央水研), 石樋由香(水産機構増養殖研), 渡部諭史(水産機構増養殖研)
*Yoshitake TAKADA(JSNFRI FRA), Motoharu Uchida(FEIS FRA), Naoaki Tezuka(FEIS FRA), Mutsumi Tsujino(FEIS FRA), Toshihiro Shigeta(FEIS FRA), Shuhei Sawayama(NRIFS FRA), Hiroaki Kurogi(NRIFS FRA), Kentaro Niwa(NRIFS FRA), Yuka Ishihi(NRIA FRA), Satoshi Watanabe(NRIA FRA)

 海陸の狭間にある干潟は、人間活動の影響を大きく受けるとともに、高い生物生産性と生物多様性を有している。干潟の環境は空間的には不均質だと考えられるため、異なる群集組成を示す複数の区域に分割し、区域内の多様性(α多様性)と区域の違いによる多様性(β多様性)を区別すべきだ。多様性を評価する地域は階層的に拡大縮小が可能である。本研究では北海道から九州までの12干潟のマクロベントス調査のデータを利用し、多様性を空間階層的に積み上げて、どの空間スケールで多様性が高くなるかを調べた。
 各干潟の3地点にて、一辺20cmの方形枠で深さ10cmまでの底泥を3回採集し、1mmの篩上に残ったマクロベントスを持ち帰り、種査定と計数を行った。得られた群集データを36地点・12干潟・5地方・全国という4階層に積み上げ、対応するα多様性をα1、α2、α3、γ(=α4)とした。多様度指数はRényiの有効種数qDを、感度パラメータq=0, 1, 2, ∞について求めた。q=0で種数、q=1でシャノン、q=2でシンプソン、q=∞で最優占種占有率と関連する指数となる。各階層のα多様性はJost (2007)の方法で求めた。ここで、乗法的βmuは他と類似性のない有効群集数、加法的βadは空間スケールを広げた時に増加する有効種数だと解釈できる。
 種数では地点レベルでの多様度が01=16.3種、全国では0Dγ=183種となり、地点レベルの多様性(α1)が低く、干潟から全国レベルでのβ多様性(βmu, βad)が有意に高かった。qを増加させて優占種の重みを増すと、大きな空間スケールでのβが減少し、地点レベルのαの貢献度が増加した。これは、希少種よりも優占種において、より広く大スケールに出現する傾向を示している。なお、本研究は平成25~29年度の水産庁委託漁場環境生物多様性評価手法実証調査事業の成果の一部である。


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