| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-378  (Poster presentation)

鳥類の卵殻表面構造の種間比較
Interspecific variation in the surface structure of avian eggshell

柿野凌, 橋本晏奈, 佐藤敦, 竹中万紀子, *松井晋(東海大学生物学部)
Ryo Kakino, Anna Hashimoto, Atsushi Sato, Makiko Takenaka, *Shin MATSUI(Tokai Uni., Biology)

鳥類で唯一,抱卵を行わないツカツクリ科の鳥類の卵は,ニワトリと比較すると卵殻表面の構造が大きく異なることが知られている.例えばクサムラツカツクリ Leipoa ocellata は,土と植物リターを混ぜ合わせたマウンドを作り,その中に卵を埋めて微生物が土壌中の有機物を分解する際に生じる熱を利用して胚発生が進むため,卵殻表面の撥水性が高く,細菌の付着や浸透を防ぐ構造を持つことが報告されている.鳥類の卵殻表面の撥水性は細菌感染リスクを防御する機構が備わっていると考えられるが,これまでほとんど注目されてこなかった.そこで本研究では,営巣環境の異なるスズメ目鳥類 2 種であるスズメ Passer montanus とシジュウカラ Parus mionr を対象に,卵殻表面の構造と撥水性を比較することを目的とした.卵殻の撥水性を種間で比較するために,アセトンで洗浄した2種の卵(計 15 個)について,接触角計を用いて卵殻表面に水滴を定着させたときの接触角を測定した.接触角とは,固体表面を基準に液滴の端点における液の角度で,この角度が大きいほど撥水性が高いことを示す.また,各種の卵殻にみられる気孔数を種間もしくは卵殻の部位(鋭角部,赤道部,鈍角部)で比較するため,スズメとシジュウカラの 卵(計 10 個)を走査型電子顕微鏡で観察した.シジュウカラの卵では,産卵期と抱卵期を含むグループのほうが未孵化卵のみのグループと比較して卵表面の撥水性が有意に高かった.また,スズメとシジュウカラの未孵化卵との間には,有意な差はみられなかった.スズメとシジュウカラの卵殻の気孔数は,2 種ともに鋭角部,赤道部,鈍角部にかけて気孔数が減少していた.スズメの気孔数はシジュウカラより少ないことも明らかとなった.これらの結果をもとに,鳥類の卵殻構造と細菌感染リスクの関係について考察する.


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