| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-391  (Poster presentation)

ボルネオ島熱帯雨林における空中リターからのCO2放出
CO2 release from litter trapped by trees in a Bornean tropical forest

*片山歩美(九州大学), 遠藤いず貴(兵庫県立大学), 牧田直樹(信州大学), 松本一穂(琉球大学), 久米朋宣(九州大学), 大橋瑞江(兵庫県立大学)
*Ayumi KATAYAMA(Kyushu University), Izuki Endo(University of Hyogo), Naoki Makita(Shinshu University), Kazuho Matsumoto(University of Ryukyu), Tomonori Kume(Kyushu University), Mizue Ohashi(University of Hyogo)

 森林全体の炭素放出量を正確に見積もるためには、各呼吸速度の鉛直方向の変動を明らかにする必要があるが、従属栄養呼吸に関する研究の多くは、地表面リターを対象としている。しかしながら、リターの一部は落葉の過程で、樹冠の枝などによってトラップされ、空中に位置するリター(空中リター)も存在する。このような空中リターは、熱帯林では特に、森林の炭素循環プロセスに大きく寄与している可能性がある。したがって本研究ではボルネオ島熱帯雨林において、空中リターのバイオマスと炭素放出量を測定し、森林の炭素循環に占める役割を明らかにすることを目的とする。
 本研究はマレーシアのランビルヒルズ国立公園で行った。2017年9月にクレーンを使い、10地点の地上と樹冠において空中リターを採取し、リターから放出されるCO2放出速度(Fco2 mgCO2 kg-1 hour-1)を測定した。水処理後、再度、Fco2を測定した。2018年9月に、同じくクレーンを使い、6地点において、ゴンドラから届く範囲内にある全てのリターを採取し、採取高さを記録した。また、5m四方のプロットを作成し、地上から高さ2mにある全ての空中リターを採取した。同時に20㎝四方の表層リターを採取した。採取したリターはFco2を測定した。
 リターのFco2は大きく変動したが、高さ方向との有意な関係は見られなかった。水処理後のFco2は、水処理前よりも平均で4.3倍高かった。全ての時期においてFco2はリターの含水率と有意な正の相関があった。空中リター重量は表層の6.5%であった。高さ2mまでの空中リターは全体の空中リターの27.3%であり、多くのリターが地表面付近でトラップされていることが分かった。これらのデータから算出された空中リターのCO2放出量は、0.01μmolm-2sec-1であり、本試験地の平均土壌呼吸速度(5.7μmolm-2sec-1)に比較すると非常に小さく、空中リターが森林の炭素循環に及ぼす影響は非常に小さいことが明らかとなった。


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