| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-393  (Poster presentation)

重金属集積植物リョウブのリター分解に伴う元素動態
Elemental dynamics through litter decomposition of a heavy metal accumulator, Clethra barbinervis

*山口毅志, 富岡利恵, 竹中千里(名古屋大学大学院)
*Tsuyoshi YAMAGUCHI, Rie Tomioka, Chisato Takenaka(Nagoya University)

リョウブ(Clethra barbinervis)は蛇紋岩地帯などの重金属含有土壌でも生育できる樹木であり、重金属を樹体へ高濃度に集積することが知られている。重金属元素の一部は微量栄養として重要である。リョウブ葉中重金属元素濃度の季節変化として、秋にかけてCuは転流することが確認されているが、他の重金属元素は増加する傾向が確認されている。このように重金属が高濃度に集積したリョウブのリターが土壌に供給された後の分解に伴う重金属元素の動態は、いまだに明らかになっていない。樹木の養分利用を解明するにあたって、落葉とリター分解は森林生態系における元素動態の主要プロセスであるため、その詳細を把握することは重要である。本研究では、リョウブの養分利用において重金属の高濃度集積が果たす役割の解明を目的として、リターバッグ法により分解に伴うリター中元素動態を調べた。
2016年1月にリタートラップで回収したリョウブ落葉をバッグにいれ、同年3月から名古屋大学構内二次林の林床に設置した。2年間4、6、8、12月にリターバッグを回収し、乾燥重量測定、元素濃度測定を行った。
結果として、C/N比は初年度の6月から低下傾向があり、微生物による分解の進行が示された。リター中重金属濃度では、Co、Cu、Fe、Mn、Znで時間経過に伴い高濃度になる傾向があった。特に、Cu、Fe、Znは初年度の6月から初期の存在量よりも増加する傾向があり、微生物の繁殖に伴う流入やリター中難分解性成分への周辺土壌粒子からの吸着等が示唆された。一方で、リター中で特に高濃度に集積されていたCo、Mnは10月以降に増加しており、リターへの安定的な保持により、他成分の減少に従って相対的に濃度が増加したことが示唆された。これらのことから元素の種類と集積濃度によってリター分解に伴う動態が異なることが示された。また、葉中に高濃度に集積した重金属はリター中に長期的に残存することが示された。


日本生態学会