| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-399  (Poster presentation)

酒造好適米における炭素・酸素安定同位体比および糊化温度の長期変動
Long-term variations in the carbon and oxygen stable isotopes and gelatinization of sake rice

*赤松史一, 奥田将生, 藤井力((独)酒類総合研究所)
*Fumikazu AKAMATSU, Masaki OKUDA, Tsutomu FUJII(Natl. Res. Inst. Brew.)

 酒造りに適した米である酒造好適米のデンプンに関する情報は、日本の伝統産業である清酒醸造において製品の品質を決定する重要な要素となっている。酒造好適米のデンプン構造に起因する糊化温度は、工程管理において最重要である蒸米の酵素消化性を規定する要因となっており、登熟期間の気温変化を反映することが知られている。デンプンの炭素・酸素安定同位体比についても登熟期間の栽培環境の変化に応答することが予想されるが、これらについては知見が少ない。気候変動下における酒造好適米の性質を予測する上でも、気象要因による酒造好適米の性質変化への理解は今後ますます重要性が増していくと思われる。本研究では、酒造好適米の品種である山田錦を対象に、同一の水田で栽培された過去20年間の試料を用いて、炭素・酸素安定同位体比、および糊化温度の登熟期の気象要因への長期応答を調べた。山田錦の炭素・酸素安定同位体比は、登熟期の降水量の増加および平均日最低気温の上昇にともなって低下していた。一方で、日照時間の増加とともに、炭素・酸素安定同位体比は上昇していた。山田錦の糊化温度は、これまで報告されている通り登熟期の平均日平均気温とともに上昇していたが、降雨量および日射量とは相関がなかった。山田錦の炭素・酸素安定同位体比、および糊化温度は、登熟期の気象要因の変動を反映しており、気候変動下における酒造好適米の性質を予測する指標となる可能性がある。


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