| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-403  (Poster presentation)

日本国内のグローバルフォールアウト空間分布推定における多重対流圏界面の説明効果
Multiple tropopause structures offer an explanation for spatial distribution of Global fallout in Japan

*伊藤江利子(森林総研北海道), 三浦覚(森林総研), 青山道夫(福島大学), 志知幸治(森林総研四国)
*Eriko Ito(FFPRI, Hokkaido), Satoru Miura(FFPRI), Michio Aoyama(Fukushima Univ.), Koji Shici(FFPRI, Shikoku)

福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)で放出された放射性セシウム(137Cs)が降下した森林の長期的な管理方法を策定する上では、降下137Csの蓄積と再移動に関する予測を数十年スケールで行うことが必要である。一般に137Csは表層土壌の粘土に吸着され、長期に渡って安定的に残存するとされるが、地形が急峻で降水量が多い日本では降下137Csが森林系外に逸出する可能性も懸念される。137Csの動向を示唆する重要な指標の1つは、1950-60年代の大気圏核実験による地球規模の降下137Cs(global fallout 137Cs, 137Cs-GFO)である。日本では137Cs-GFOの空間分布は日本海側の北西部で蓄積が大きいことがかねてより報告されており、この空間分布パターンは福島原発事故の直前に全国で収集された森林土壌(深さ0〜30cm)試料の137C蓄積量においても認められた。137Csを含むGFOに関して日本に特異的に認められる特徴は、諸外国ではGFOの空間分布は降水量にほぼ比例するのに対して、日本ではその原則が当てはまらないことである。日本に特有の137Cs-GFOと降水量との間の空間分布の不一致のために、福島原発事故前の時点における森林表層土壌中の137Cs-GFO蓄積量は判明しても、それが初期降下量に比べてどの程度残存していたかが分からないのが現状である。本研究では1950-60年代の降水中の137Cs-GFO濃度が空間的かつ季節的に大きく変動していた事実に基づき、高層大気の擾乱と降水量の時空間分布から、日本全国における137Cs-GFO累積降下量の空間分布を再構築した。


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