| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-412  (Poster presentation)

湖の窒素循環における大気降下物の寄与
Contribution of atmospheric deposition to nitrogen cycle in a lake

*眞壁明子(海洋研究開発機構), 山本雅道(信州大学), 木庭啓介(京都大学)
*Akiko MAKABE(JAMSTEC), Masamichi Yamamoto(Shinshu Univ.), Keisuke Koba(Kyoto Univ.)

硝酸態窒素は、水圏で生物が利用できる主要な窒素形態であり、硝酸態窒素の動態を理解することは、水圏での生物活性を理解する上で重要である。そのソース・シンクとして、大気降下物、硝化、同化、脱窒などがあり、それらが相互に絡み合うため窒素循環は複雑である。硝酸イオンは、窒素原子と酸素原子からなり、脱窒菌法により窒素・酸素の両安定同位体比が分析可能になって以降、窒素循環に関わるプロセスの解析に有用なツールとして用いられてきた。大気由来硝酸は、その生成過程によって酸素同位体比異常をもつことが知られている。この酸素同位体比異常は、同化や脱窒などの消費プロセスおいては保存され、生成などにより複数のソースが混合したときのみに値が変化するものである。そのため、酸素同位体比異常の大きさを解析することにより、大気由来硝酸がどれくらい存在しているか、どのくらい消費されて硝化などによりどれくらい置き換わっているかを議論することができる。
長野県にある木崎湖は年に2回循環する湖であり、降雪地帯であることから、大気降下物による窒素循環への寄与が大きいと考えられる。硝酸イオンの酸素同位体比異常を調べると、少なくとも12%程度の硝酸態窒素が大気由来であり、雪が降らなくなる5、6月でも雪解け水の流入による大気降下物の寄与があることが示唆された。また、成層が進むと、表層では同化による消費が進み、深層では脱窒による消費が進むと共に硝化により新たに生成された硝酸に置き換わっていることが観測された。


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