| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-439  (Poster presentation)

秋吉台国定公園内の耕作放棄地における刈り取り管理と草原性植物の再生
Restoration of grassland plants by mowing management at an abandoned cultivated land in Akiyoshi-dai Quasi-National Park

*太田陽子(緑と水の連絡会議)
*Yoko OHTA(Open Net. for Nature Conserv.)

 山口県中央部に位置するカルスト台地・秋吉台の上には広大な半自然草原が広がり、その景観は秋吉台国定公園の重要な構成要素となっている。しかし、かつての耕作地や牧場跡地には外来植物が繁茂しており、生物多様性保全上、また景観保全上好ましくないとされている。本研究では、外来植物の駆除を目的として続けられてきた刈り取り管理の効果を検証するため、優占種であるセイタカアワダチソウと草原性植物の現存量の変化や土壌の化学性について検討した。
 調査対象地ではおもにセイタカアワダチソウが優占しており、2008年から年1〜2回の刈り取り管理が続けられている。刈った草を持ち出す区(持出区)、刈った草を持ち出さない区(持出なし区)、刈り取らない区(刈なし区)それぞれに2m×2mのプロットを複数設置し、9月に植生調査を行った。2009年からは隔年でプロット周辺の土壌を採取し、有効態リン酸量や土壌pHを測定した。
 管理の継続に伴って、持出区ではセイタカアワダチソウの地上部現存量が減少し、ススキやネザサ等の草原性植物の現存量が増加した。管理開始後10年目には草原性植物の現存量がセイタカアワダチソウのそれより大きくなった。一方、持出なし区や刈なし区ではセイタカアワダチソウの現存量は増加していた。また、持出なし区では草原性植物の現存量が減少した。土壌の化学性については、持出区では土壌中の有効態リン酸量が減り、土壌pHも低くなる傾向があったが、それらの値は外来植物が生育していない半自然草地での値よりかなり大きかった。
 これらのことから、刈り取り管理の継続により徐々に草原性植物の再生が進むことがわかった。また、刈った草を持ち出さない場合、草原性植物の再生は難しいことも推察された。


日本生態学会