| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-441  (Poster presentation)

風力発電増加シナリオ下におけるオジロワシ個体群の将来予測
Predicting the cumulative effects of wind farm development on white-tailed eagle population in Hokkaido, northern Japan

*藪原佑樹(徳島大学), 赤坂卓美(帯広畜産大学), 河口洋一(徳島大学)
*Yuki YABUHARA(Tokushima University), Takumi Akasaka(Obihiro University), Yoichi Kawaguchi(Tokushima University)

風力発電の導入が急速に進められる中で、鳥類等の風車への衝突事故が度々発生している。特に、産子数が少なく生存率が高い大型猛禽類では、風車衝突事故の増加に伴う死亡率の上昇により、個体群へ深刻な影響が及ぶことが懸念される。オジロワシは国内に生息する大型猛禽類であるが、風車との衝突事故が国内だけで40件以上報告されており、個体群への影響が最も懸念される種の一つである。そこで本研究では、今後も多数の風力発電の導入が計画されている北海道において、風力発電施設がオジロワシの繁殖個体群に及ぼす累積的な影響を評価するため、風車との衝突影響を考慮したオジロワシの個体群存続可能性分析を行い、複数のシナリオ下で個体群の将来予測を行った。まず、野外調査と既存文献から得られた個体数や繁殖力、生存率といった値を基に個体群推移行列を計算して感度分析を行った。続いて、個体群の確率的変動と風車衝突の影響を組み込んだ個体群予測モデルを構築し、複数のシナリオ下でオジロワシ個体群の将来予測を行った。風車との衝突影響は、過去の衝突事故報告を基に発電容量(1MW)当たりのオジロワシの年間衝突数を推計し、全体の個体数から個体当たりの死亡率に換算して、生存率の値から差し引くことで考慮した。解析の結果、推移行列の最大固有値から求めた個体群増加率は1を上回り、風車衝突の影響を考慮しない場合、個体群は増加傾向にあると予測された。感度分析では、成鳥の生存率と繁殖力が個体群増加率に強く影響することが示された。さらにシナリオ分析では、北海道内で計画されている風力発電施設において現状と同様の確率で衝突事故が発生すると仮定した場合、オジロワシの個体群増加率は大きく低下すると予測された。発表では、これらの結果を基に個体群動態の予測上の課題と今後の保全策について議論したい。


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