| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-442  (Poster presentation)

佐渡島固有種サドガエルの生息適地の探索
Investigating habitat suitability of sado-wrinkled frog

*宅森美優(東京大学), 曽我昌史(東京大学), 小林頼太(東環工専), 関谷國男(元新潟大学), 宮下直(東京大学), 吉田薫(東京大学)
*Miyu Y.R. Takumori(Tokyo Univ.), Masashi Soga(Tokyo Univ.), Raita Kobayashi(TCE), Kunio Sekiya(Niigata Univ.), Tadashi Miyashita(Tokyo Univ.), Kaoru T. Yoshida(Tokyo Univ.)

水田は、自然湿地に依存する様々な生物種にとって貴重な代替生息地として機能してきた。しかし、1960年代半ばから始まった農業の近代化(機械化や集約化)に伴い、多くの水田で大規模な環境改変が進み、そこに生息する生物種が減少した。水田を生息地とする生物分類群のひとつに、両生類があげられる。両生類は他の分類群と比べて環境の変化に対して脆弱であり、本州・四国・九州に住む両生類のうち75%の種が水田を繁殖に使うことから、農地の近代化の影響を受けやすいと考えられる。水田の近代化が両生類へ与える影響は多くの研究で評価されているが、有効な保全策はいまだ分かっていない。水田に棲む両生類の保全と農業生産の両立を図るには、どのような環境要因がそれらの分布や個体数を規定しているかを明らかにする必要がある。
 本研究では、水田を主な生息地とする佐渡ヶ島固有種のサドガエル(Glandirana susurra)個体群を対象に、水田におけるサドガエルの分布および個体密度を決める環境要因を解明することを目的とした。佐渡島の水田群を対象に、6月上旬と、中干し期の6月下旬の2時期でサドガエルの個体数を調査し、個体数に影響を与える環境要因を探った。統計解析には一般化線形混合モデルを用いた。局所要因としては、水路の構造的な深さ、江の長さの割合を用い、景観要因としては局所的な水分条件に影響を及ぼす可能性のある凸凹度、周囲の森林率をGISにより算出して用いた。解析の結果、サドガエルの分布および個体密度は水路の構造的な深さと関連する(水田周辺の水路が浅い場合に個体数が多くなる)ことが明らかとなったが、景観要因との間には明確な関係性は確認されなかった。本発表ではこれらの結果をもとに、サドガエルの分布や個体数を向上させるうえで有効な方策について、佐渡ヶ島で行われている環境保全型農業と絡めて議論したい。


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