| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-455  (Poster presentation)

「およその評価指標」を使った柔軟な保護区選択ツール
A flexible tool for conservation area prioritization using ordinal data of biodiversity elements

*竹中明夫, 石濱史子, 雨谷教弘, 小熊宏之(国立環境研究所)
*Akio TAKENAKA, Fumiko Ishihama, Takahiro Amagai, Hiroyuki Oguma(NIES)

これまで、生物の分布情報や保全コストなどに基づいて、効率的な保護区の配置を支援する計算ツールがいくつも開発されてきた。広く使われているものとしては、Marxan や Zonation などがある。これらの計算ツールはいずれも、もととなる評価データが加算可能な比例尺度変数であることを前提にしている。現実に得られるデータは、しばしばそこまでの定量性はない。専門家の経験と主観的判断に基づくランク付けなどがその例である。そうした加算可能ではない「およその評価指標」の持つ情報を活かして保護区を選択する計算ツールSecSelを開発した。
SecSelは、順序尺度で評価された多数の生物多様性要素を効率よくカバーするように保護区をデザインする。それぞれの生物多様性要素(種、生態系など)について、評価が相対的に高い区画をあらかじめ設定した区画数だけカバーするように保護区を選択する。相対的な優先度のみが必要なので、データは順序尺度であればよい。個々の区画の保全に必要なコストも、順序尺度以上で評価されていれば組み込み可能である。同一区画内では保全が両立しない複数の多様性要素がある場合にどちらを優先するか、また、保全とは両立しない土地利用とどのように妥協するかについても、SecSel が解を提案する。。順序尺度のランクの分け方、目標の設定などにより、保全の具体的なケースに応じた柔軟な利用が可能となる。
SecSel を使い、北海道大雪国立公園の高山帯において、高山植物を重点的に保全するべき区画を選定した。高山植物を雪田植生・風衝植生・低木群落に分け、植生タイプごとの保全目標を設定するとともに、同じタイプの植生であっても生物多様性保全を目的として保全する場所と、登山客が花畑などととして楽しむ場所をそれぞれどこに設けるべきかを求めた。登山口から各区画への登山道上の距離(到達時間)を管理コストとして組み込んだ。


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