| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-08  (Poster presentation)

低コスト型の屋上緑化を成功させるには? ~植物の生育特性に依存する混植の効果~
How to maintain extensive green roof at low-cost? The effect of companion planting depends on plant growth characteristics

*篠原咲希音(東大附属中等教育学校), 澤野咲来(忍岡高等学校)
*Sakine Shinohara(Secondary School of U. Tokyo), Sakura Sawano(Shinobugaoka High School)

 都市域の生態系サービスを向上させる取り組みとして、屋上緑化の普及が進んでいる。特に、粗放型屋上緑化は薄層土壌を用いて緑化を施すため、建築物の荷重制限やコスト面から近年注目を集めている。一方で、薄層土壌上で潅水量を抑えて緑化を施す特徴から、粗放型屋上緑化では導入可能な植物種の僅少さが問題視されてきた。CAM植物であるセダムの混植は土壌水分量を増加させ、他種の生育を改善させることが報告されている。一方で、混植により生育改善効果が期待される対象植物の生育特性に関しては、詳細に解明されていない。よって本研究では、植物体サイズの大きい植物種では蒸発散量が多く、セダム混植の効果が大きいと仮説を立て、異なる植物体サイズを持つ複数の対象植物についてセダム混植の効果を検証した。
 植物体サイズの異なる4種類の植物種(タイム、ミント、ラベンダー、レモンバーム)について、セダム混植の有無で分別し、4ヶ月間屋上部での栽培実験を行った。セダムとして、混植による生育改善効果の有効性が示されているシロバナマンネングサを用いた。栽培期間中は、土壌水分量、草丈、保水量を継続的に測定した。
 栽培実験の結果、草丈の高いミントでは土壌水分量が低く、混植の有無に関わらず植物体は枯死した。一方で、草丈の低いラベンダーとレモンバームではセダム混植により土壌水分量が増加し、生育状態が改善されていた。タイムでは土壌水分量が常に高く、栽培期間中に生育の悪化はみられなかった。保水量はセダム混植の有無により変化しなかった。
 以上の結果より、セダム混植は一定範囲の植物体サイズを持つ植物種の生育を改善することが示された。また、蒸発散量が過剰に多い植物種では、セダム混植による土壌水分量の増加では生育改善に寄与しないと推察された。加えて、セダム混植による土壌水分量の改善は保水力の改善ではなく、蒸発散の抑制に起因していることが示された。


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