| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-09  (Poster presentation)

ヒメザゼンソウの開花傾向と越冬戦略
Symplocarpus nipponicus Makino:Flowering Tendency and Strategy to allow growth during the winter

*山下愛, 植木玲一(北海道札幌啓成高校)
*Mei Yamashita, Reiichi Ueki(Hokkaido Sapporo KEISEI S.H.S)

ヒメザゼンソウ(Symplocarpus. nipponicus)は、発熱植物として知られるザゼンソウ(S. foetidus)と同属であるが、仏炎苞はより小型で生態の相違点も多い。本種の生態研究は、長野で数個体を調査した研究(大塚、2004)等が散見されるが、北海道での研究はほとんどなく、大塚らの研究でもまとまった個体数の経年変化は報告されていない。本校科学部員は、2014年4月に本種が札幌啓成高校敷地内自然林に多数展葉するのを見つけた。これらの個体群を継続的に調査し、記録が不十分な本種の生態を明らかにすることを本研究の目的とした。調査は、北海道札幌啓成高等学校敷地内自然林(43.06N,141.49E)に90㎡の調査区Aを設け実施した。調査項目と調査時期を1)~4)に示す。1)全個体のナンバリング、葉枚数・葉サイズ計測:2014~2016年の5月。2)開花状況確認、花の発達過程記録:2014~2016年の6~8月。3)各個体の状態を「葉柄内芽状態」・「シュート表出」に区別し記録:2015年の6月~8月。4)シュートの芽生えの内部構造の調査:2015年の8月・2016年の4~7月。
調査結果について、同様に1)~4)に示す。1)調査区での個体群密度は0.5個体/㎡以上であり、同一個体での葉枚数・葉サイズは経年減少傾向を示した。2)開花割合は4~11%で、2年連続の開花個体も観察された。さらに開花個体は3枚葉以上、葉サイズ500㎠以上だった。3)来年のシュートの芽生えは、今年の最も内側の葉の葉柄内芽状態で現れた。4)シュートの芽生えの内部には、来年の鞘状葉と葉、再来年の鞘状葉が準備され、葉は6~8月に作られていた。シュートは前年の葉に守られて夏期に地上部に出現し、冬期は鞘状葉により葉を守りながら成長する仕組みが観察された。以上より、本研究で、調査区Aの個体群について、密度と開花個体割合、花数と葉枚数・葉サイズとの関係と経年変化、シュートの内部構造等が明らかになった。


日本生態学会