| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S05-3  (Presentation in Symposium)

魚類の社会学習能力と生態の関係
Ecology of social learning in fish

*高橋宏司(慶應義塾大学)
*Kohji Takahashi(Keio University)

学習とは、経験による行動や心理の変化であり、動物がその生態において生き残り、繁殖する上で極めて重要な心理機構である。社会学習は、周囲の他個体の観察や相互作用によって促進される学習であり、自身の経験がない(または少ない)状況で成立し、また集団内で伝播することから効率的な学習手段である。様々な動物で社会学習の事例が報告されており、魚類も生態に関する情報を社会学習によって習得することが明らかにされている。本講演では、魚類を対象とした社会学習の研究について、①生態における機能、②学習の成立機構および③情報伝播の可能性を紹介する。①社会学習の生態機能では、採餌、危険回避、競争、繁殖の場面での例を通じて、生態における社会学習の重要度を紹介する。②社会学習の成立機構では、生態に即した学習能力の発達や、学習効率とモデルの関係から、社会学習と魚類の生態との関係性やヒト的な魚類の社会学習機構について紹介する。そして、③集団における情報伝播の研究から、社会学習が魚類集団内の行動形成におよぼす可能性を紹介する。本講演を通じて、社会学習と魚類の生態の関係を伝えることで、生態学における魚類の社会学習研究の潜在性を感じていただきたい。


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