| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S10-1  (Presentation in Symposium)

アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク 10年の成果と新たな課題
10 year achievements and new challenges of Asia-Pacific Biodiversity Observation Network (AP BON)

*矢原徹一(九州大学)
*Tetsukazu Yahara(Kyushu University)

過去10年間に世界規模で推進された「生物多様性観測」は、生態学にいくつもの新しい変化をもたらした。第一に、個人や個々の機関で所有されることが多かった生物多様性データのオープンデータ化が進み、オープンデータにもとづくデータサイエンスの潮流が生まれ。第二に、個々の観測点で独立に行われてきた調査間の連携が進み、広域・長期観測研究が発展した。国内ではモニタリングサイト1000による広域・長期観測体制が構築された。国外では、環境研究総合推進費戦略的研究開発領域プロジェクトS9「アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合的研究」(2011-2015)により、東アジア・東南アジア諸国の科学者・関連機関との共同観測が発展した。その成果を報告した論文は、IPBESアジア太平洋地域アセスメント報告書に多数引用され、アセスメントに貢献した。第三に、DNAレベルから衛星観測レベルまでの各階層において新技術が開発され、観測の精度・効率・スケールが桁違いに刷新された。アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク(AP BON)が10年目を迎えるこの機会に、これらの新しい潮流から生まれた成果を総括し、「生物多様性観測」の次期10年の戦略について議論したい。
生物多様性観測の発展には、S9のような大規模観測プロジェクトをもういちど組織することが望ましい。そのためには、次期10年へのビジョン・コンセプト・戦略を具体化・明確化し、魅力的な提案をまとめる必要がある。
シンポジウムではまず矢原から、S9によるアジア規模での生物多様性観測の成果を紹介し、環境省からモニタリングサイト1000による広域観測の成果を紹介する。その後、6名による講演を通じて、さまざまな階層・バイオームでの生物多様性観測の成果について学ぶ。最後に総合討論を行い、次期10年に向けての新たなビジョン・コンセプト・戦略について考えたい。


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