| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S16-3  (Presentation in Symposium)

カメラトラップと捕獲データから推定するイノシシの繁殖期前後の生態特性の変化
Temporal changes in ecological characteristics of wild boars before and after the breeding season estimated by camera traps and harvest data.

*横山雄一(東京大学), 矢島豪太(日本大学), 中島啓裕(日本大学), 宮下直(東京大学)
*Yuuichi Yokoyama(The University of Tokyo), Gouta Yajima(Nihon University), Yoshihiro Nakashima(Nihon University), Tadashi Miyashita(The University of Tokyo)

 イノシシは近年各地で個体数が急増し、深刻な農作物被害を引き起こしている。効果的な個体数管理を行うためには、個体群動態などの生態的特性に基づいた捕獲努力の空間配置が必要である。イノシシは大半のメスが平均4頭程度の子を出産すると言われ、子は半年以上メス親と行動を共にすることが知られている。このことから、出産期である初夏前後においてメスの親の行動や幼獣の密度は大きく変動することが予想される。そこで本研究では、個体数や行動把握に有効なカメラトラップを用い、イノシシの個体群密度、箱わなによる捕獲効率、利用環境の3点が時間的にどう変化するかを解明することを目的とした。個体群密度はREST model (Nakashima et al. 2018) によって幼獣と成獣を区別して月ごとに推定し、その密度を基に箱わなによる捕獲効率を月ごとに推定した。また、カメラによるイノシシの観測数を用いて、イノシシの環境選好性が月ごとにどのように変化するかを調べた。その結果、個体数密度は月ごとの短いスケールで推定することが出来た。また、捕獲効率は出産期の後に上昇傾向が見られ、成獣よりも幼獣のほうが有意に獲れやすいことがわかった。さらに、メス成獣とそれに随伴する幼獣では、オス成獣に比べて環境選好性が時間的に大きく変化することがわかった。すなわち、出産期中は森林のような閉鎖的な環境を好むが、その後は農地のような開放的な環境を好むことが分かった。以上から、初夏から夏にかけて農地付近を利用するメス成獣と幼獣が増え、罠で捕獲されうる個体も増えた結果、捕獲効率が上昇したと考えられる。したがって、出産期後の時期に農地周辺に多くの箱罠を設置し、見回り頻度を高めるなどの維持管理を徹底することで、捕獲数の向上が図れることが推察された。


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