| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S17-4  (Presentation in Symposium)

カエルの鳴き声を用いた湿地の生息地評価:関東平野の田んぼのカエルマップ
The wetland evaluation using anuran calling surveys: the habitat distributions of paddy field-breeding frogs of the Kanto plain

*松島野枝, 長谷川雅美(東邦大・理・生物)
*Noe Matsushima, Masami Hasegawa(Toho Univ.)

水田は人工的な湿地であり、特に低地おいて自然湿地が失われてきた中で、湿地性の生物の主要な代替生息地としての役割を担っている。水田は食料生産だけでなく遊水機能などの地域的な役割も注目されているため、水田生態系の保全には生物多様性の高い水田の分布の把握といった基礎情報が必要とされるだろう。そこで本研究では、日本最大の平野である関東平野において、水田の代表的な生物であるカエル類を対象として、野外調査をもとに生息分布マップを作成した。種数や生息数の地域的な特徴や水田の特徴を調べ、生物多様性から見た水田地域の評価や抽出することを目的としている。カエル調査の利点は、鳴き声を聞き録音するという簡便な方法を利用できることである。関東平野全域において、水田を含む200地点で、2018年5月と6月にそれぞれ夜間に1回ずつ鳴き声の聞き取り調査を行い、同時にICレコーダーで音声を録音した。このデータをもとに、地形や植生、湛水状況などの水田環境と各種の分布の関係を解析した。聞き取りおよび録音から、5種のカエルの鳴き声が得られた。各種の鳴き声の有無及び鳴き声の録音回数に対して、水田や森林面積などの土地利用や地形、湛水時期などの効果を解析した。また、関東平野全域の分布傾向を背景として、市民が地元のカエルの分布を調査する場合を想定し、調査方法の検討を行った。調査の協力者が現地で鳴き声から判別した種と録音データの聞き直しを比較したところ、判別した種は80%以上一致した。間違えやすい種、現地で聞いた鳴き声のレベルと録音から聞いた鳴き声の回数の違いや調査時の気候の影響など、市民調査として実施する場合の注意すべき点もみられた。


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