| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W14-1  (Workshop)

全国スケールにおける樹木の直径成長の気象への応答
Response of tree growth to weather conditions on a nationwide scale

*日野貴文(自然環境研究センター), Olga Orman(Univ. Agriculture in Krakow)
*TAKAFUMI HINO(Japan Wildlife Research Center), Olga Orman(Univ. Agriculture in Krakow)

全国の森林において、気候変動と関連して樹種構成がより暖かい気候を好む樹種構成へと変化している可能性が指摘されている。そのため気候変動により、樹木種によっては地域によって成長が増大、もしくは減少していると予測される。この予測を検証するには、樹木の成長と気温などの気象要因との関係を知る必要がある。気象要因が成長に与える影響について、樹木では操作実験が難しく野外観測をもとに検証するのが妥当である。一方で樹木の成長は気象要因だけでなく、個体サイズや個体差からも影響を受けるため、より多くの個体を観測する必要がある。加えて、検証する気象要因のレンジを幅広くとるために、広域かつ長期のデータが必要であるが、そのような大規模長期データは限られている。モニタリングサイト1000森林・草原調査では、全国で約50カ所、15年程度の期間、毎年もしくは5年ごとに約1haの調査区内の樹木の胸高直径が計測されている。本研究では、このデータを用いて樹木の直径成長に与える年平均気温の効果を検証した。解析対象とした種は、3サイト以上かつ100個体以上出現した62種である。直径成長に与える年平均気温の効果を推定するため、成長量=ある樹種の潜在最大成長量×年平均気温の効果×サイズ効果×個体差 とするモデルを構築し、ベイズ推定により各パラメータを推定した。解析の結果、当年の年平均気温への応答は樹種ごとに異なった。直径成長と年平均気温との間に正や負あるいは上に凸の関係を示した種が半数を占め、残り半数の種は関係性がみられなかった。直径成長と年平均気温に関係性がみられた種では、気候変動による直径成長の増大もしくは減少がより起こりやすいと考えられる。また、直径成長と年平均気温との関係がみられなかった種は、降水量などの他の気象要因、もしくは今回のモデルで明示的に考慮できなかった地形などの微環境がより直径成長に影響を与えていると考えられる。


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