| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W14-4  (Workshop)

日本の森林における地表徘徊性甲虫群集の変化傾向
Changing trends in ground-dwelling beetle communities in Japanese forests

*丹羽慈(自然環境研究センター)
*Shigeru Niwa(JWRC)

森林の土壌生物群集は多様性が非常に高く、また有機物の分解や栄養塩の循環において大きな役割を果たしており、森林の生物多様性や生態系機能を支える重要な生物群であるといえる。近年の世界的な気候変動は土壌の生物群集にも変化をもたらしている可能性があるが、そのような変化を検証するための大規模で長期的な観測データは非常に限られている。また、比較的環境が安定している土壌中よりも、地表付近に生息する生物の方が、より気象変化の影響を受けやすいと考えられる。地表徘徊性甲虫類は、飛翔能力が弱く主に地表で生活する甲虫類で、とくに森林では土壌動物など様々な動物を餌とする捕食性の種が多く、土壌生態系の上位捕食者としての役割を果たしている。環境の変化に応じて種組成が変化しやすい上に、土壌動物の中ではサンプリングや同定が比較的容易であるため、しばしば環境指標生物として用いられる。モニタリングサイト1000森林・草原調査では、亜高山帯・冷温帯から亜熱帯までの全国22カ所の森林サイトで、2004年から毎年、約1haの調査区内の5地点で地表徘徊性甲虫類のサンプリング調査が行われている。本研究では、このデータを用いて2005~2017年の13年間における地表徘徊性甲虫類の捕獲数および種組成の全国的な変化傾向を分析した。4サイト以上で20個体以上捕獲された8種の内、4種で寒冷なサイトで捕獲数が増加する傾向が、2種で温暖なサイトで減少する傾向が認められた。また全国的に優占する種群の中では、冷涼な森林で優占度が高いナガゴミムシ類(Pterostichus属)は全国的に減少傾向のサイトが多かったが、より温暖な森林で優占するツヤヒラタゴミムシ類(Synuchus属)は増加傾向のサイトが多かった。一方で種組成は、より温暖な地域の組成に近づく傾向を示すサイトはほとんどなかったが、北海道の1サイト(苫小牧)で南方性の種の全般的な増加と一部の北方性の種の減少による明瞭な組成の変化が認められた。


日本生態学会