| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
第7回 日本生態学会奨励賞(鈴木賞)/The 7th Suzuki Award
配偶シグナルが良く似た近縁種間では、種間求愛や種間交尾といったコストをともなう相互作用が生じることがある。このような繁殖時の種間相互作用は繁殖干渉と呼ばれる。繁殖干渉は近縁種の共存を阻む要因の一つである。しかし繁殖干渉の実証研究が体系的に行われるようになったのはこの20年ほどのことであり、生態学の歴史の中では比較的新しい概念である。
私は繁殖干渉の原因と結果を明らかにするため、およそ10年にわたり研究に取り組んできた。例えば、種内の性選択は繁殖形質の進化を駆動することで繁殖干渉の程度に影響する可能性がある。マメゾウムシ類を用いた研究では、実際に種内の性選択が繁殖干渉能力を進化させることを示唆する結果が得られた。また、繁殖干渉はそれ自体が選択圧となり適応進化を駆動しうる。たとえば種認識や棲み分けによって繁殖干渉は回避できるだろう。しかし種認識と棲み分けは、資源利用能力が良く似た近縁2種の共存しやすさには異なった影響を与えるだろう。進化動態・個体群動態を同時に考慮したシミュレーションモデリングにより、種認識と棲み分けのいずれか一方しか進化しない場合には、棲み分けによって近縁2種の共存がより容易になることを明らかにした。また、両形質が同時に進化できる場合には、これらの形質が非対称な進化的相互作用を示すことも明らかにした。
本講演では、これらの研究の紹介を通じて、群集理論や進化理論と繁殖干渉がどういった関係にあるのか、今後の展望も交えつつ議論したい。