| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-05  (Oral presentation)

回転を伴う逃避:野外におけるコバネイナゴ
Escape with tumbling: Japanese rice grasshopper Oxya yezoensis

*久我立(九州大学), 鶴井香織(琉球大学), 粕谷英一(九州大学)
*Tatsuru KUGA(Kyushu Univ.), Kaori TSURUI(Univ. of the Ryukyus), Eiiti KASUYA(Kyushu Univ.)

接近してくる捕食者から逃避する被食者は、疾走、遊泳、飛翔、跳躍といった様々な逃走方法で逃避する。中でも跳躍はネズミ、カエル、バッタといった様々な分類群の動物で観察される逃走方法である。跳躍時に生じる力はしばしば、その向きと被食者の重心の位置に応じて、被食者の体を回転させる。この回転は着地の制御を困難にするため、動物は跳躍時の回転を制御していると考えられ、いくつかの制御手段が室内実験によって報告されている。しかし、室内実験は無風で障害物の無い、安定した足場からの跳躍を想定しており、野外での跳躍時にも同様の制御がはたらくかは未解明である。また、逃避中の回転運動は落下地点の予測不能性や被食者の掴みにくさを向上し、被食者の生存率を高めて有益となる可能性がある。ただし、多くの室内実験では、被食者を掴んで高速度カメラの前に置いた後の跳躍を調べている。この時の跳躍は一度捕食者に捕まった後(征服後)の逃避を意味しており、捕食者の接近に対する逃避とは状況が異なる。一方で、逃避行動の研究は回転に注目していない。
 野外で逃避する被食者が跳躍に伴って回転しているかを調べるため、高速度カメラを取り付けた人が捕食者モデルとしてコバネイナゴに接近し、逃避行動を調べた。コバネイナゴは翅を羽ばたかせる飛翔と、後脚で跳ねる跳躍の2種類の逃走方法を使う。結果、コバネイナゴは野外での逃避中に回転することがあり、回転はオス(10.6%)よりもメス(32.8%)で観察されやすかった。回転は跳躍時に観察されることがほとんどであったが、飛翔時にも観察されることがあった。また、障害物である草と衝突した場合、しなかった場合の両方で回転が観察された。
 本研究は、逃避中の体の回転が野外で逃避する被食者にも該当する現象であることを示した。この回転の有無には逃走方法が関連しており、野外では障害物との接触によっても体が回転することが判明した。


日本生態学会