| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) B02-02 (Oral presentation)
アリ科は高度な社会性の発達により生態的に繁栄している。一方、その生態的特徴である、集団での営巣やコロニー内の低い遺伝的多様性から、病原体に感染すると一気に広まる危険性が高い。そのため、アリ科の種は相互グルーミングや抗菌物質の分泌などの機能を進化させ、病原菌に対抗していると考えられている。自力で動くことができないアリの幼虫やサナギは、病原菌などから自分で身を守ることができず、主にワーカーにより保護されている。一方、アリ科の多くの種のサナギは繭を形成するため、これが何らかの感染防止のための機能を果たしていると考えられる。
本研究において、繭を作る一部の種で、幼虫が繭を形成した後に、ワーカーが繭の後端部分を切り取る行動を発見した。この行動の意義を明らかにするために、繭後端の有無がカビの発生率やサナギの死亡率に影響するかを調べた。その結果、繭後端があることでカビが発生し、死亡率が高くなることが分かった。さらに、繭後端の切り取りを行わない種において、このような行動がなくてもカビが生じない理由を探るため、繭形成後にサナギに対するワーカーの行動を観察したところ、繭後端へのグルーミング頻度が増加する傾向が見られた。