| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-03  (Oral presentation)

アリグモはモデル・アリを見分けるか?
Do ant-mimicking spiders recognize model-ants?

*橋本佳明(兵庫県立大学), 遠藤知二(神戸女学院大), 兵藤不二夫(岡山大学), 市岡孝朗(京都大学), 山崎健史(首都大学東京)
*Yoshiaki HASHIMOTO(University of Hyogo), Tomoji ENDO(Kobe woman college), Fujio HYODO(Okayama university), Takao ITIOKA(Kyoto University), Takeshi YAMASAKI(Tokyo Metropolitan University)

我々はアリ擬態現象を熱帯林における多様性創出機構として解明するために,東南アジア熱帯林で同所に出現するアリとアリ擬態ハエトリグモであるアリグモ属の種多様性の関係や擬態マッチングの解析,安定同位体を用いた食物連鎖解析,供餌実験等による捕食行動などの調査などをおこなってきた.その結果,アリグモ属では各々の種が,同所に生息する特定のアリ種や属に,体型,体色,体サイズまでを正確に真似る「似すぎる擬態」をすることが明らかになった.さらに,その「似すぎる擬態」が,アリグモの食性や捕食行動などに大きな制約をもたらし,非擬態ハエトリグモ類と比較して,擬態による防衛効果(ベイツ擬態)の利益よりも大きなコストをもたらしている可能性も示された.我々は,現在,この「アリに似すぎる擬態」が,ベイツ擬態の利益を超えた生存利益を,アリグモにもたらしているのではないかと言う仮説の検証を進めている.本講演では,その検証実験の一つとして行った「アリグモの擬態モデル・アリ識別」実験について,報告する.この実験では,アリグモが自身の擬態モデル・アリと非モデル・アリを識別して行動を変化させ,モデル・アリの場合には,そのテリトリー内に留まる習性を有することが示唆されている.


日本生態学会