| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-04  (Oral presentation)

Sexual maturation level in termite king determines alate sex ratio

*Mamoru TAKATA(Kyoto Univ.)

社会性昆虫の最も大きな特徴である繁殖分業は、繁殖に特化した生殖虫と労働を担う不妊のワーカーにより成り立っている。巣内で生まれた子は、発生過程で生殖虫またはワーカーへと分化する。そのため、分化運命の性差は生殖虫の性比に影響する要因と捉えることができる。シロアリでは、生殖個体である羽アリの性比はコロニーによって大きく異なるが、その分散を説明する要因は未解明である。ヤマトシロアリでは、幼虫の分化運命は孵化後の社会環境によって決定されると考えられてきたが、現在では親の性的発達を反映したゲノムインプリンティングによって決定されることが数理モデルにより示されている。本研究では、ヤマトシロアリの野外コロニーを大量に採集し、コロニー毎に王・女王・羽アリの性比・ワーカーの個体数を調査することで、生殖虫の性的発達と羽アリ性比との関連性を調査した。その結果、王が女王より性的に発達しているコロニーほど、羽アリ性比がオスに偏るという顕著な傾向が認められた。一方、ワーカーの個体数を始めとしたその他の要因は、羽アリ性比に影響しなかった。また、羽アリ性比は、繁殖カーストと不妊カーストが分岐する3齢時点での繁殖カーストの性比を反映することが判った。これらの結果は、両親の性的発達を反映した父性・母性効果が、相対的に異性の子より同性の子の性的発達を促進することを示唆する。この父性効果をもたらすメカニズムについて、ゲノムインプリンティングの観点から考察する。


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