| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-06  (Oral presentation)

モグラ2種における太さの異なる金網トンネルの使用頻度の比較
Comparison among frequency in use of wire mesh tunnels with different diameters  in two species  of moles

*吉村和倫, 清水智央, 横畑泰志(富山大学・院・理工)
*Kazumichi YOSHIMURA, Tomohiro SHIMIZU, Yasushi YOKOHATA(Toyama Univ.)

日本にはニホンモグラ属(Mogera)に属する5種のモグラ類が生息しており、分布境界域では体の大きさが顕著に異なっている。この大きさの違いは用いるトンネルの太さの違いとして、行動に影響していると考えられる。
本研究ではアズマモグラ(M.imaizumii)8頭、コウベモグラ(M.wogura)6頭を用い、太さの異なる金網製トンネルの使用回数の比較を行った。モグラを巣箱と餌箱の2つの飼育箱で飼い、その間を3本の金網製トンネル(直径が捕獲地で測ったトンネル径のもの(「中」)と1 cm細いもの(「細」)、1 cm太いもの(「太」))でつないで自由に選択させた。トンネルの配置は48時間ごとに変更し、その際においの影響をできるだけ除くため洗浄処理を行った。使用回数に対するトンネルの太さの影響を、R(version i386 3.3.2)による一般化線形混合モデルで種ごとに分析した。また、トンネル選択の種差の有無をロジスティック回帰で分析した。
アズマモグラは「中」に対して、「細」も「太」も有意に使用頻度が低かった(P<0.01)。コウベモグラは「中」に対して「細」の使用頻度が低く(P<0.01)、「太」では高かった(P<0.01)。ロジスティック回帰分析では使用する通路の太さに有意な種差は検出されなかった(P=0.177)。
 アズマモグラが「太」を避けたのは趨触性(ものに触れると安心する性質)があるためで、両種とも「細」を避けたのは狭いためだと考えられる。コウベモグラは一般化線形混合モデルでの解析では「太」を好んでいたので、ロジスティック回帰で有意な種差は検出されなかったが、趨触性がアズマより低い可能性がある。また、コウベモグラの「細」の直径はアズマモグラの「中」のものに近い。そのため、お互いのトンネルの太さが積極的に利用する太さでないことが競合排除を一時的に緩和していると考えられる。


日本生態学会