| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) B02-11 (Oral presentation)
多回交尾する種において、雌は交尾後ある程度の交尾間隔(不応期)を示すことが知られている。イモゾウムシ(Euscepes postfasciatus)の雄は、射精物を用いて雌に不応期を導き、雌の再交尾を抑制している。その不応期を測定したところ、1~49日(平均14日、N=103)と大きくばらついていた。不応期の長さはどのように決まり、雌雄の形質がいかに影響を及ぼすかを明らかにした研究は少なく、未解明な部分が多い。そこで、このばらつきを生み出す要因について、雄の形質(体サイズや射精物の量・質が個体によって異なる)か、雌の形質(体サイズや射精物分解能力が個体によって異なるなど)か、その交互作用かどうかを調べた。方法は、性成熟した未交尾の雌雄を用意し、それぞれにIDを付け、体サイズを測定した。その後、雌雄ペアにして交尾させた。交尾した雌には、翌日から新たにランダムに選ばれた雄を毎日2時間投入し、雌が再交尾するまでの期間(1回目の不応期)を測定した。同様の手順で、2回目の雌の不応期を測定した。一方で交尾した雄は、別の雌(2番目)と交尾させ、その雌の不応期を測定した。不応期の長さに対する雌雄の体サイズの影響、及び雌は1回目と2回目の不応期、雄は1番目と2番目の交尾相手の不応期の関係について調べた。その結果、不応期に対し雌雄体サイズは有意に影響しなかった。また雄において、1番目と2番目の交尾相手の不応期に有意な相関はなかった。一方で、雌において、1回目と2回目の不応期に有意な正の相関が見られた。つまり、一貫して短い不応期を示す雌、長い不応期を示す雌といった、不応期に雌の固定的な特性があることが明らかとなった。イモゾウの不応期は、雄の射精物の効果により誘導されるものの、その長さ、いつ解除(再交尾)するのかは雌が決定しているものと考えられた。