| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C01-01 (Oral presentation)
不完全なサンプリングを考慮した階層群集モデル(hierarchical community model: HCM)が近年開発されており、生物群集の組織化を理解するうえで有用だと考えられる。しかし、不完全なサンプリングを考慮することの是非や関連するサンプリングデザインについては未知なことが多い。そこで本研究では、HCMと一般的に用いられている序列化手法のredundancy analysis(RDA)を用い、不完全なサンプリング下で群集個体数データの推定性能をシミュレーションで比較した。シミュレーションでは調査地点数、訪問回数、平均発見率、平均個体数を変化させた。RDAでは複数の非類似度を用い、訪問回数が調査地点間で異なるケースでは、3つのタイプのRDA(通常のRDA、partial RDA、weighted RDA)の性能を同時に調査した。さらにバロ・コロラド島での樹木のプロットデータを用い、発見率が1未満の仮想的な調査を実施し、真の個体数が既知の実証データに対してHCMとRDAを適用した。
その結果、群集構成種の「真の」個体数を推定するという意味では、HCMが最も優れていた。個体数の環境依存性を推定するという意味では、平均個体数がHCMとRDAの性能に最も影響しており、HCMの性能はGower非類似度を用いたRDAの性能と拮抗していた。RDAの3つのタイプの性能は、訪問回数の調査地点間への分布と非類似度に依存していた。樹木のプロットデータの解析からもおおよそ同様の結果が得られ、個体数の環境依存性を図化する際には、個体数の推定値の選択が重要だった。今回の条件下では、個体数の環境依存性を調査するという観点からは、RDAの非類似度を適切に選択できれば、HCMとRDAの性能は類似していると考えられた。