| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C01-03 (Oral presentation)
生態学では「生物が多様な生態系ほど人類にとって有益な機能を発揮・維持する」ことが予測されてきた(Biodiversity and Ecosystem Functioning, B-EF理論; Tilman 1999)。この予測は主に生産者群集において実証され、国連ミレニアム生態系評価といった世界的な取り組みの前提になっている。しかしながら、これまでのB-EF理論は主に「相互作用していない」あるいは「競争関係にある」生物群集を対象にしており、多様な相互作用をもつ生物群集に適用できる理論はいまだ確立していない。本研究では、近年提案されたネットワーク理論の近似を利用することで、解析的にランダム群集におけるB-EF理論の予測を導き、これまでの理論をより多様な生物群集に適用できるよう一般化する。本研究の結果から、生物群集の多様性や複雑性(結合度・相互作用強度)と生態系機能の関係性は、注目する機能におけるサンプリング効果(群集内の種数の増加によって機能を発揮する種が増加する効果)の有無や、群集に含まれる正の相互作用と負の相互作用の割合によって変化することが予測された。発表では、本研究の結果を踏まえて、より豊富で安定した機能を維持するためにはどのような生物群集を成り立たせることが重要かについて議論したい。