| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-02 (Oral presentation)
日本の重要な水産資源でもあるニホンウナギ(ウナギ科ウナギ属)は、資源量の減少と絶滅が危惧されている。資源管理の上でも、ニホンウナギの各生活史段階における分布を知ることは重要である。環境DNA解析による分布調査は有効な手段の1つと考えられ、ニホンウナギについては、ごく微量のニホンウナギ由来のDNAを検出する種特異的なプライマーを用いた解析手法が確立されている(Itakura et al. 2019; Takeuchi et al. 2019)。一方、ニホンウナギの回遊域にはウナギ属の近縁他種が分布することが報告されているが、その生態は不明な点も多い。また、日本国内にもニホンウナギと同属のオオウナギが自然分布し、他の近縁外来種も養殖等のために導入されている。これらの近縁種とニホンウナギの間には生態学的な相互作用も予想され、ウナギ属種全体の分布モニタリングは、ニホンウナギの生態を知るためにも有用であると考えられる。そこで本研究は、環境DNAから同時にウナギ属の複数種を同検出できるメタバーコーディング解析の手法開発を行った。国際データベースから入手したウナギ属17種・亜種のミトコンドリアゲノムをアラインメントし、16S rRNAと12S rRNA領域にそれぞれ1組ずつのウナギ属共通のプライマーを設計した。設計したプライマーにより、ニホンウナギ、オオウナギ、ヨーロッパウナギのゲノムDNAについて、ターゲット領域が増幅されることを確認した。次に、オオウナギとヨーロッパウナギを飼育する水槽の水から抽出した環境DNAに対し、設計したプライマー2組でそれぞれメタバーコーディングを行ったところ、これら2種の塩基配列が検出された。さらに、周辺海域をニホンウナギが回遊していると考えられる小笠原諸島・父島において、2018年7月と11月に採取した河川水から環境DNAを抽出し、同様に解析した。その結果、オオウナギは検出されたがニホンウナギは検出されず、ニホンウナギは父島の河川は利用していない可能性が示唆された。