| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-03 (Oral presentation)
2008年以降、今日までの約10年間で、環境中に存在する環境DNAを利用して魚類などの大型生物の分布や生物量などを推定する環境DNA分析手法の開発と適用が急速に進められてきた。特に、水棲大型生物の在不在検出においては、捕獲手法と比較して環境DNA分析は同等もしくはそれ以上の検出力を持ち、費用対効果が非常に優れていることが多くの先行研究により示され、新しい有用な生物調査手法として広く認知されるようになってきた。
では、次の展開として、回収した環境DNAから種の情報以外に何か有用な情報を得ることはできないだろうか。この問いに対し、Sigsgaard et al. (2016)は種特異的に増幅したジンベエザメRhincodon typusの環境DNAをハイスループットシーケンサー(HTS)による超並列塩基配列決定に供することにより、種内の遺伝的多様性を評価できることを初めて示した。本研究は環境DNA分析の持つ、遺伝的多様性調査への潜在的な高い有用性を示唆したが、同時に実用化には解決すべき解析上の課題が多く残されていることが浮き彫りとなった。
本講演では、環境DNA分析を用いた遺伝的多様性評価におけるこれまでの研究例とその課題、また課題解決のために演者が進めてきた研究について紹介するとともに、将来的な利用可能性や展望について議論したい。