| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-07 (Oral presentation)
環境変動下における生態系機能と生物多様性の関係性は、草地での群集操作実験を中心に多くの研究が蓄積されてきた。特に、干ばつ・増雨に対する植生応答のメタ解析から、環境変動時の一次生産の安定性が植物の種多様性と関係していることが報告されている。これら生物多様性―生態系機能の研究では、一次生産者である植物群集を対象とすることが多い一方で、様々な生態系機能が発揮されるには他の栄養段階生物の働きが不可欠である。特に、植物の根圏には菌根菌をはじめ多くの菌類が定着しており、植物の栄養・水分吸収と密接に関わっている。これら根圏菌類の多様性も植物群集や生態系機能と関わっていることが近年報告されているが、環境変動下における応答に関する知見は限られている。本発表では、降雨量操作下の草原における植物-根圏菌類群集の応答と生態系機能の関係性を解析した。
調査は北海道大学天塩研究林の半自然草原に設置した降雨量操作試験区(3×3m,30区画)で行った。降雨除去・潅水により自然降雨の50%、150%に操作した減雨区、増雨区を設定し、対照区と合わせて3種類の処理区を各10区画設定した。降雨量処理は植物の生育期(5-10月)に実施し、処理継続3年目に各区の植物・根圏菌類の群集と生態系機能および環境変数を同時に測定した。植物群集データは地上部刈取りにより計測した。各区の根サンプルをMiseqによるメタゲノム解析に供試し、根圏菌類のOTUデータを取得した。生態系機能は、生産性、分解速度、栄養循環に関わる各指標を計測した. 本試験地ではこれまでに、植物多様性と生態系の多機能性との正の相関や、降雨量操作による植物群集の変動が確認されている(髙木らESJ65,近藤らESJ66)。本発表では、根圏菌類の群集動態を加味した多次元栄養段階の生物群集多様性と生態系機能の関係性に関して議論する。