| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-11 (Oral presentation)
近年、昆虫の生物多様性の低下だけでなく、そのバイオマスあるいは個体数の減少が注目されている。しかし、群集レベルでそれらの個体数の長期的変動を定量的に把握できるデータを取得することは通常困難であり、その実態は十分に明らかにされていない。演者らは、2000年代初期から竹筒トラップ(トラップネスト)の手法を用いて、兵庫県内で管住性ハチ類の調査を行なってきた。この手法では、竹筒に営巣するハチ類に異なる栄養段階の種が存在すること、各種ハチ類に労働寄生する寄生者が存在すること、また育室数(産卵数)を個体数の指標として定量化できることなどから、食物網構造をもった群集データを比較的容易にとることができる。景観生態学ではトラップネストを用いた研究は多く行われているが、長期にわたる変動を分析した例は今のところない。そこで、兵庫県の日本海側から瀬戸内海側にかけておもに2000年代(多くは2008年)に調査した30地点を選んで、2018年に同じ調査方法によって再調査を行なった。方法は、4-5月に各調査地点に内径の異なる4種類の竹筒各5本計20本からなる竹筒トラップを5基設置し、10月にそれらを回収して、営巣したハチの種と育室数、寄生者の種と寄生された育室数を調べた。その結果、管住性ハチ類と寄生者の種数では大きな変化はなかったが(それぞれ全体で2000年代18種と20種、2018年22種と19種)、育室数と寄生育室数は減少していた(それぞれ全体で2000年代5235室と565室、2018年3505室と271室)。各地点の育室数と寄生育室数の減少は有意だった。育室数の減少は、大型ドロバチ類とクモバチ類で顕著であり、とくに前者では普通種のオオフタオビドロバチと侵入種の可能性のあるオデコフタオビドロバチの両種がともに減少していた。発表では、寄生者を含む食物網の変化についても報告する。