| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-01  (Oral presentation)

低酸素状態のマングローブ根圏で硝化は起きているか?―植物と土壌微生物の相互作用
Does nitrification occur in the rhizosphere of mangroves under potentially hypoxic conditions? -interactions between plants and soil microbes.

*森岡たまき(京都大学), 小山里奈(京都大学), 黒岩恵(中央大学), 井上智美(国立環境研究所), 松尾奈緒子(三重大学), 大手信人(京都大学)
*Tamaki MORIOKA(Kyoto Univ.), Lina A. KOYAMA(Kyoto Univ.), Megumi KUROIWA(Chuo Univ.), Tomomi INOUE(NIES), Naoko MATSUO(Mie Univ.), Nobuhito OHTE(Kyoto Univ.)

 マングローブ林は熱帯・亜熱帯の潮間帯に分布し、土壌は湛水条件で嫌気的になりやすい。陸域の森林土壌など、好気的な土壌中に存在する窒素の形態は大きく有機態窒素とアンモニア態窒素と硝酸態窒素からなる。一方、潮間帯の土壌は湛水条件のため酸素を必要とする硝化の活性は低く、無機態窒素の多くがアンモニア態窒素であると想定される。しかし、マングローブ土壌中の根圏では非根圏の土壌よりも硝酸態窒素の現存量が大きいという事例が報告されている。マングローブ植物には酸素を地中の根に供給する機能がある呼吸根を持つものが多い。本研究では、マングローブ林土壌中に呼吸根からの酸素漏出により酸素が存在し、硝化が生じているかを検証した。
 調査は沖縄県西表島北部のマングローブ林で行った。対象樹種はオヒルギとヤエヤマヒルギで、各種について3個体の周囲で表層土壌を10試料ずつ採取した。試料は土壌と根に分け、根は細根(直径2mm未満)と粗根(2mm以上)に分けて根量を測定した。土壌は同位体希釈法によって総硝化速度を測定し、加えてpH、炭素・窒素濃度などの化学性を測定した。樹種ごとに総硝化速度に影響を及ぼす要因を重回帰分析により検討した。
 総硝化速度はオヒルギの土壌では1.31±1.04 mg N kg−1 day−1、ヤエヤマヒルギの土壌では8.41±8.50 mg N kg−1 day−1であった。根量が多い試料で総硝化速度が高い傾向がみられ、根による酸素供給が硝化を促進することが示唆された。ただし、重回帰分析の結果はオヒルギ土壌では有意な影響を示す説明変数がなく、ヤエヤマヒルギ土壌ではpHが最も強く影響している結果となった。また、土壌微生物のアンモニア酸化酵素遺伝子の配列をターゲットとした遺伝子の定量を行い、総硝化速度との関係についても検討した。


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