| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-04 (Oral presentation)
本研究は、兵庫県西播磨地域を流域圏とする千種川において、複数年にわたる夏季および冬季の面的一斉調査で得られた河川水試料の溶存イオン濃度、硫酸イオンの硫黄・酸素安定同位体比、および硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比を用いて、流域における硫酸イオンおよび硝酸イオンの起源と動態を解明することを目的とした。調査は、2015年~2018年の8月、および2018と2019年の2月に実施した。
硫酸イオンは、観測期間中1.2〜1390 mgl-1の濃度の変動幅を示した。全期間に共通して、濃度は北部の源流域で低く下流域で高い空間傾向がみられた。各地点の濃度と同位体比は夏や冬の季節に関係なく、ほぼ同じ値を示した。硫酸イオンの起源について、硫酸イオンの硫黄・酸素安定同位体比を用いて解析した結果、大部分の地点の硫酸イオンは土壌の硫酸塩由来であること、河口に最も近い地点の硫酸イオンが海水由来であることが推定された。また2015年〜2018年の8月と2018年、2019年の2月の濃度と同位体比の比較から、硫酸イオンの動態は季節によらず一定であることが示唆された。
硝酸イオンは、観測期間中0〜17 mgl-1の濃度の変動幅を示した。2015年〜2018年の8月に共通して、中流から下流域では源流域と同程度の低い濃度である空間傾向がみられた。反対に2018年と2019年の2月では、中流から下流域の同地点の濃度が源流域よりも高い傾向がみられた。硝酸イオンの起源について、硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比を用いて解析した結果、季節に関係なく、2つの支川(大日山川、矢野川)の硝酸イオンは有機質肥料や排水に含まれる窒素の硝化に由来することが推定された。また2015年〜2018年の8月と2018年、2019年の2月の濃度と同位体比の比較から、2月に中流から下流域で観測された低濃度の硝酸イオンに対して、水生生物による取り込みや脱窒の寄与が考えられた。